アウェーの地に「宮殿」の名を打ち立てる極彩色のインパクトあるディスプレイ!
強烈な印象を持たせる売場は細やかな工夫と努力の賜物
今夏、日本食研が主催する「2025年夏 焼肉のたれ宮殿 ディスプレイコンテスト」が開催された。栄えある「宮殿コース」のグランプリを獲得したのは、JAながさき県央が運営するスーパー、Aコープ西諫早店だ。
赤と黄色が織りなす、まばゆいばかりのコントラストが強烈に目に飛び込んでくる。「なかなかここまで赤と黄色が目立つ商品はない。私たちはその商品力をそのまま生かしただけです」と、陳列を担当した木下一成氏は謙虚に語る。
この極彩色のディスプレイは陳列台にとどまらず、床にもびっしりと貼られている。また、上部にある宮殿の販促物は、販促ボードを切り取って貼り合わせているという。その切れ目のないシームレスな仕上がりに、売場づくりにおける細やかな目配りを感じさせる。
特筆すべきは、この膨大なディスプレイの素材をスタッフが一つずつ手作業で製作したということだ。一枚一枚プリントを刷り、ラミネートをかけ、それぞれが交互になるように貼っていく。このような地道な作業を、みっちりと時間をかけて丁寧に仕上げていったという。こだわり抜かれた売場は注目度も高く、定番売場に並ぶ時期と比べ、約10倍の売れ行きとなった。
一方、諫早市は元々、他社の大手食品メーカーの工場が所在する場所。他社メーカーのお膝元であるため、焼肉のたれに関しても日本食研としては苦戦を強いられていたという。
そのような状況の中、今回のディスプレイは、アウェーの地に「宮殿」の商品力を訴える最大限のアピールとして、購買者にインパクトを与えたことだろう。諫早市や長崎県央エリアにおける焼肉のたれ市場の今後の動向が楽しみだ。
地元食材の良さを存分に生かした農協直営店舗ならではの強み
ところで、諫早の地にも近年、ディスカウントストアが増え始めているという。現に去年の秋には、商圏内に500坪ほどの大きな店舗が開店した。強力な競合店が登場すると価格競争に巻き込まれてしまいそうなもの。ライバルが増え始めた現在の状況について、木下氏に率直な気持ちを聞いてみた。
「もちろんディスカウント店は価格競争を仕掛けてくるでしょう。ですが私たちはそこは一歩こらえて、人々が何を私たちに求めているのか、冷静に見極めたいと思います」(木下氏)
市場の状況の変化にもかかわらず、木下氏に焦りはない。木下氏の泰然とした態度の秘密は、他の店舗には出せない同店の大きな強みがあるからだ。
Aコープ西諫早店はその名のとおり、長崎県の農協が直営している店舗。農協のネットワークにより、地域の選りすぐりの食材が一堂に集まる。
地元の野菜・果物はもちろん、全国屈指のブランド牛である長崎和牛、豚肉でも「ながさき健王豚」といった地元の逸品が購入できる。さらに、三方を湾に囲まれた港町・諫早市ならではの海産物コーナーのクオリティも評判だ。時には朝市が開催されることもあるという。
地元の価値ある食材を変わることなく提供していくこと。昔から変わらないその姿勢が今、どの店舗にもないオリジナルの魅力として輝きを増している。




