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ダイヤモンド・チェーンストア9月1日号朝食マーケット特集

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共働き世帯の朝食は「時短+栄養」訴求がポイント

女性の社会進出拡大や、老後不安の高まりなどを背景に、近年共働き世帯が増加している。内閣府の「男女共同参画白書」によると、1980年に約600万世帯だった共働き世帯は、2017年には約2倍の1188世帯にものぼる。そこで、主婦の就業状況が食卓にどのような影響を与えているのかを「朝食」にフォーカスして紹介する。

文=倉田悠(株式会社ライフスケープマーケティングトータルサービス部 マネージャー)

共働き世帯の平日朝食支度時間は「15分未満」が6割強

共働き世帯は、慌しい時間帯となる平日朝食の支度に、どれくらいの時間をかけているのだろうか。食MAP®モニタへ実施している「食生活に関する意識調査」の回答率を見ると、2015~17年の共働き世帯における平日の朝食支度時間は「15分未満」が約65%を占めており、専業主婦と比べると7ポイント高い。さらに、05~07年の共働き世帯と比較すると約6ポイントの増加と同時に、「誰も食べない・つくらない」が約4%となることからも、平日朝食における働く主婦の「時短ニーズ」が顕著であることが読み取れる(図表1)。

図表1●平日の朝食支度時間回答率(食MAP®モニタへの食生活に関する意識調査)

共働き世帯の「代替メニュー需要」

次に、共働き世帯における平日朝食のメニュー傾向を見てみる(図表2)。「平日朝食支度時間が15分未満と回答した共働き世帯モニタ」(以下、『時短派共働き世帯』)は「野菜ジュース」や「飲むヨーグルト」などの出現が全体と比較して高いことがわかる。一方で「野菜サラダ・生野菜」、「茹で野菜・蒸し野菜」、「ヨーグルト」などの出現は全体と比較して低く、「野菜料理→野菜ジュース」や「ヨーグルト→飲むヨーグルト」のように、形態を飲料へ変えて栄養摂取を図っていることが読み取れる。また、その他の飲料においても「牛乳」、「乳酸菌飲料」、「豆乳」、「ココア・麦芽飲料」など比較的栄養素の高い飲料を好んでおり、『時短派共働き世帯』にとって、朝食における飲料は、水分補給だけでなく手軽な栄養摂取の手段として位置づけられている。

図表2●共働き世帯の平日朝食メニューTI値

飲料以外では『時短派共働き世帯』において「食パン・トースト」や「菓子パン」、「シリアル」、「おにぎり」などの“おかずのいらない主食”の出現が高い一方で、「ご飯」、「味噌汁」、「目玉焼き・ハムエッグ」、「卵焼き」、「焼き魚」などの出現が低く、従来の「一汁三菜」の献立から離れつつあることが推測できる。実際に、食MAP®データ(15~17年)から平日朝食の献立パターンを算出すると、『時短派共働き世帯』は「主食+飲料」の組み合わせが約20%を占め、共働き世帯全体および専業主婦全体と比較しても高いことがわかっている。

今後も増加が予想される共働き世帯に対して、より効果的な朝食提案を実現するためには、時短訴求と同時に、手軽で効率的な栄養摂取がポイントとなりそうだ。

 

食MAP®とは、株式会社ライフスケープマーケティングが提供するマーケティング情報システム。1998年10月から首都圏30km圏内在住の主婦世帯を対象に、食品の購買、調理、消費までをパネル形式で調査したもの。

 

変化し続ける朝食価値、時短・簡便を軸とした価値提案を

厚生労働省の平成28年国民健康・栄養調査結果によると、朝食の欠食率は男性で15.4%、女性で10.7%になる。厚生労働省の試算によると、年間約53億の欠食、潜在的な市場規模は総額約1.6兆円にものぼる。国内市場が縮小傾向にあるなかで、まだまだ開拓の余地がある朝食市場。この市場を開拓することができれば大きな成長が見込めるのは間違いない。本稿では、クックパッド株式会社が提供する、食の検索データ分析サービス「たべみる」からみえる「朝食」に対する一端を紹介する。

文=安達結(クックパッドトレンド調査ラボ)

和食ごはんのワンプレート

「朝食」と組み合わせて検索されるキーワードを確認してみよう。検索データには、メニュー名や材料名に限らずシーンやイベントなど「コト」での分析も可能だ。朝食と組み合わせて検索される割合が大きく伸びているのが「ワンプレート」だ。盛り付け方しだいで見た目もきれいにできることでSNSに投稿されやすく、洗い物も少なく済むので時間のない朝にマッチしている。

さらに、そのワンプレートとの組み合わせ検索頻度が上昇しているのが「ごはん」だ。ワンプレートといえば、「パン」をイメージしがちだが、「朝食」との組み合わせ検索頻度は、2015年に「ごはん」が「パン」を上回り、16年には「トースト」も上回っていることがわかった。

こうした背景のひとつには、「つくり置き」が関係していると考えられる。「つくり置き」は週末などにまとめてつくっておく料理であるが、この5年間で、検索頻度が6倍以上増加している。時間が限られた朝食にも「つくり置き」を活用することができる。また、つくり置きと組み合わせて「煮物」や「副菜」など和食メニューも多く検索されていることから、和食ごはんのワンプレートがつくられやすく、「ごはん」との組み合わせが多くなっていると考えられる。

図表●「朝食」との組み合わせ頻度

野菜を中心とした朝食

そのほか、注目されている朝食トレンドを紹介する。「朝食」と組み合わせて検索されるキーワードを見てみると、「野菜」も上昇していることがわかった。朝一番に野菜を食べることは、食べ過ぎや、急激な血糖値の上昇防止の効果が高いといわれている。野菜にフルーツやたんぱく質を加えた「パワーサラダ」などは、栄養価やフォトジェニック(情緒的価値)の要素からも、最近のトレンドのメニューだ。同様に、「スープ」も「朝食」と組み合わせて検索される割合が上昇している。朝食に対する価値といえば、主に時短・簡便が重視されていたこともあり、野菜ジュースやスムージーなどが注目されてきた。一方で、野菜を使ったスープは、腸温活などの機能的な価値をともなったレシピが投稿されており、今後もバリエーションの拡大が予想される。

複数価値の提案で差別化を

近年では、時短・簡便価値のほか、彩りが豊かで視覚からのおいしさを演出した「フォトジェニック」を兼ね備えた提案が重要視されてきた。しかしながら、変化し続ける朝食市場において、こうした価値訴求だけでは継続して朝食シーンを獲得することは難しく、商品や売場の差別化にはつながらない。今後は、こういった価値を残しつつも、健康などの機能的価値を兼ね備えることがますます重要になってくるだろう。

 

【クックパッド】クックパッド(https://cookpad.com)は、1998年3月にサービスを開始した日本最大の料理レシピ投稿・検索サービス。月次利用者数は約6000万人、20~40代女性の多くが利用している。 【たべみる】クックパッド株式会社が提供する、食の検索データ分析サービス。